前回のBLOG記事では香港のドルフィンウォッチングツアーを紹介しました。
今回は香港のピンクイルカについて詳しく書いていこうと思います!

ピンクイルカは数種類いる

先日SAMSARAの PRAY FOR AMAZON キャンペーンで、ブラジルはアマゾン川に棲息する【アマゾンカワイルカ】という絶滅危惧種のピンク淡水イルカを紹介しました。このアマゾンカワイルカと香港のピンクイルカは異なる種類のイルカです。

ピンクイルカ=シナウスイロイルカ

正式名 : Indo-Pacific Humpback Dophin / Chinese White Dolphin
シナウスイロイルカ

棲息海域

彼らは香港のみならず世界中に広く分布しており、主に
南アフリカ 〜 中国/香港 〜 オーストラリア北部 の沿岸に棲息します。
(淡水ではなく海水に棲むイルカですが、棲息海域の東寄りの棲息個体は淡水と海水が混ざる河口付近を好みます。)

香港に限ると、主にランタオ島北部と索罟群島周辺でよく見かけられます。
時折、將軍澳という新興住宅地付近や西貢という人で賑わうエリアの沿岸でも見られるとか…!

身体的特徴

ピンクイルカの愛称で親しまれていますが、

産まれつきは全身濃いグレー。
生後数ヶ月で徐々に色が薄まっていき、
数年をかけて白、あるいはピンクに変化していきます!

この子のように、グレーが少し残ることもあります。

(※棲息海域によって、よりグレーが濃く残ったり、茶色がかっていたり、個体差がでてきます。)

生まれたてはおよそ1mほどですが、成獣は2.5m〜3mにまで大きくなります。

繁殖について

メスのシナウスイロイルカはおよそ10年で成熟し、オスはその数年後と推測されています。

10歳 妊娠
11歳 出産(妊娠期間は10ヶ月〜12ヶ月)
14歳 子離れ(3年間子育てをするため母子は共に行動します)

そして1回の出産につき1頭しか産まれず、3年間の子育て中は繁殖活動を行いません。ということは、イルカの繁殖活動はおよそ15年サイクルで行われます。

シナウスイロイルカの平均寿命は40年ほどですが、香港の棲息個体に限って寿命はおよそ20年と言われている為、繁殖率があまりよくないということがわかりますね…!

絶滅危惧種としてのシナウスイロイルカ

IUCNレッドリストではシナウスイロイルカは Vulnerable / 絶滅危機種 に指定されています。世界的に詳しい数値などはまだ調査中ですが、生息数が減少傾向にあるということは間違いありません。

香港の個体群に関して

特に香港の棲息個体は現在わずか32頭…!

実は香港にシナウスイロイルカが棲息するということは90年代まで知られてすらいなかったんです!
香港国際空港を建設するために埋立地を作った際に、イルカたちの存在が発覚しました。

そこから調査がスタートしているのでまだまだ知られていないことが多いのですが、当時から比べても生息数の減っていることや平均寿命が短くなっていることは明らかです。

なぜ32頭にまで減ってしまったのか

どの国でも経済発展と環境破壊は切っても切れない関係にあり、野生動物は被害を被ります。香港も例外ではありません。グローバルでビジネスが盛んなイメージの香港では徐々に豊かな自然が失われてきています。

環境破壊

イルカたちが棲息する海域を珠江デルタと呼びますが、この海域は経済発展の影響をもろに受けています。
このエリアの沿岸部は主に飛行場や輸送ポート、新しい住宅地、高速道路、工場などのインフラ建設のために自然を破壊して埋め立てられています。

埋立地の土台を作る為に爆薬を用いて一帯を破壊、あるいは浚渫して自然環境を壊します。もちろんこのような行動は瞬く間にエコシステムをも破壊しますが、爆薬の衝撃や余波などは繊細なイルカたちには大打撃です!

漁業問題やheavy sea traffic

魚にとって重要な繁殖エリアは、上記の環境破壊活動に巻き込まれて大部分が失われています。それに加え海鮮料理が豊富で漁業の需要が高い香港では魚の乱獲も日常的に行われているため、繁殖スピードが追いついていないのが現状です。

結果、魚を主食とするシナウスイロイルカたちは餌がないため、香港を離れるか餓死するか…の究極の選択を迫られてしまいます。

(香港政府が、6〜7月は漁業に制限をかけるなど、様々な対策を打ち出しているものの、まだ良い結果は出ていません。)

その他にも、漁網に巻き込まれてしまうイルカや漁船と衝突事故を起こすイルカも後を絶ちません。香港ではイルカの殺傷は違法なので、網にかかってしまった場合は速やかにリリースすることが法律とされています。とはいえ、その時に負った怪我や精神的なストレスが寿命を縮めてしまうことも一概にないとは言えません…!

水質汚染

香港ではショッキングなことに、汚水の90%は有害物質が残ったまま海に放出されており、残り10%(ほぼランタオ島の汚水のみ!)だけがちゃんとした処理を受けて安全な状態で放出されているそうです。

90%の有害な汚水は簡単なフィルタリング、あるいは一部ケミカル処理が行われてはいますが、それだけでは水銀などの猛毒は排除できません。

もちろんこのような水質汚染は成獣のイルカにとって危険ですが、繁殖活動にも影響してしまいます。

子イルカの死亡率の高さ

成獣のイルカは汚染水で育った魚を食べているのですでに体内の脂肪分に有毒物質が蓄えられてしまいます。そしてイルカの母乳は脂肪分40%のため、母乳で育つ子イルカはさらに濃縮された有毒物質を体内に取り込んでしまうのです…!

そのため、実はシナウスイロイルカの第一子は死亡率がとても高く、のちの2頭目や(長生きすれば)3頭目の子孫の方が生き延びるチャンスが高くなります。

環境破壊の恐ろしさ

このように、様々な原因が積もり積もって香港のシナウスイロイルカたちは絶滅の危機に瀕しています。

HKDWのスタッフさんから汚染水や環境破壊についての説明を受けた後に、船で該当エリアを通ると、より環境破壊の恐ろしさを実感しました。

そんな中、とても穏やかな表情で一生懸命狩りを続けるイルカたちを目の当たりにし、申し訳ない気持ちと悲しさで胸がいっぱいになりました…。

どうかこの32頭がこれから繁栄していけるように、世界の流れが変わることを信じるばかりです。

・・・・・・・・・・

SAMSARA の ピンクイルカ関連 :

BLOG前編 HKDW : ツアー紹介
過去BLOG アマゾンカワイルカについて

PRAY FOR AMAZON キャンペーン キーホルダー / キャップ

そして10月4日に新作 ECHO-LOGY LINE の第一弾【アマゾンカワイルカ】シリーズがWEBリリースします!お楽しみに♪