こんにちは。SAMSARAです。
今回ブログでご紹介するのは、先日ブランドのリローンチとともに発表したNEW COLLECTION “VOICE TO FUTURE.” の主役でもある、アリゾナ州で出会った絶滅危惧種の「メキシコオオカミ」です。
SAMSARAのコレクション作りは、テーマにする絶滅危惧種の動物に実際に会って取材をするところから始まります。
実際に現地に出向いて取材する事で彼らの歴史や現状を学んだり、現地の人々に話を聞くなどして、ネットだけでは得られない生の情報・真実を知り、情報として伝えていくことが重要だと考えています。
アパレルアイテム作りの面でも、実際に彼らに会って同じ空間にいることでしか得られない五感を通して得たインスピレーションは大いに役立っています。
2018年初春、私たちSAMSARAは、アメリカアリゾナ州にある野生動物保護施設 “Southwest Wildlife Conservation Centre” を訪れ、取材をしてきました。
今回は、まずは絶滅危惧種としてのメキシコオオカミについて紹介していこうと思います。
メキシコオオカミについて
ハイイロオオカミ(または タイリクオオカミ)の地域亜種はたくさんいて、みんな見た目は似ている部分が多く、専門家などはちょっとした違いで区別できます。
メキシコオオカミはアメリカに生息する地域亜種の中で最も小柄で、平均体重は23〜36kg程度。頭蓋骨の幅が他のオオカミよりも狭いのが特徴的です。
全体は黄色がかったブラウンとグレーで、背中から尻尾までは特に濃い毛色。
主食
メキシコオオカミは肉食動物なので、ウサギなどの小動物からヘラジカなどの大動物まで捕食します。
賢く社交的な動物であり、大きな獲物を狩る時は群れで連携を取りながら確実に仕留めます。
過去と現在の生息地
彼らが繁栄していた頃はアメリカのアリゾナ州のみならず、ニューメキシコ州やテキサス州、さらにはメキシコにも分布していました。
その数は数千頭にも及んだそうです。
1970年代、ほぼ絶滅状態だったメキシコオオカミ。
去年 Southwest Wildlife Conservation Center で責任者のロビンさんに伺ったお話では、保護活動の甲斐あって少しずつテリトリーを取り戻し、再びアリゾナ州、ニューメキシコ州、そしてメキシコに生息しています!
好む自然環境
アメリカ南西部は砂漠気候ですが、その中でもメキシコオオカミが好む環境は森林地帯です。このエリアで森林地帯や少しでも木が生い茂っているエリアは貴重で、メキシコオオカミにとっては安全な子育てや巧妙な狩りの為にもなくてはならない環境です。
絶滅危惧種とは
「絶滅危惧種」とは、絶滅の危機に瀕する動植物のことです。
環境破壊や気候変動によって野生動物が受ける影響は計り知れません。
長い時をかけて進化に進化を重ね、特定の自然環境に適した体質や生活スタイルを手に入れてきた動物たちですが、再び環境が変わるとさらなる進化と適応が求められます。
素早い適応ができずに生息数が減少していくと、国家や政府機関が絶滅危惧種認定をし、IUCNがレッドリストに動物たちを記載します。
IUCNレッドリストとは
IUCN(国際自然保護連合)は世界中の国、政府機関、NGOが加入している自然保護機関です。生物多様性、自然環境や資源を守り、よりサステナブルな共存を目指して様々な活動をしています。
レッドリストはIUCNが1964年に始めた世界一情報量の多い絶滅危惧種のデータベースで、国際機関や企業とパートナーシップを結び、地球の生物多様性を守るために世界中で調査を行っています。
レッドリストカテゴリー
絶滅の危険度が高い順に:
EX 絶滅種
EW 野生絶滅種
CR 絶滅寸前種
EN 絶滅危惧種
VU 絶滅危急種
NT 準絶滅危惧種
LC 低懸念種
DD 情報不足種
このように絶滅危惧種は絶滅の危険度によってカテゴリー分けされています。
野生動物保護団体や政府機関などはこのレッドリストで得られる情報を元にさらなる調査を行い、保護活動に役立てています。
どの団体も主に EW〜VU の絶滅動物たちにフォーカスする場合がほとんどです。
しかし、危険度が高くなるのを待つよりも先に知っておくことで防げる事もあると信じているので、SAMSARAとしてはそれ以下のカテゴリーに分類されている動物たちの認知度も上がることが願いです。
絶滅危惧種としてのメキシコオオカミ
メキシコオオカミのレッドリスト分類
メキシコオオカミ:絶滅危惧種(EN)
1976年には 野生絶滅種(EW)になりかけた歴史があり、同年にアメリカの Endangered Species Act (1973年に制定されたアメリカの絶滅危惧種の保護を目的とした連邦法)にメキシコオオカミが加えられた事によって本格的な保護活動の対象になりました。
数千頭
⇩
10頭未満(1970年代)
⇩
300頭+(2018年、野生個体と飼育下個体含め)
1998年から始まった再導入プロジェクトから20年ほど経ち、まだまだ安定した生息数ではないものの、ここまで回復してきたのは画期的だと思います!
なぜ絶滅危惧種なのか
ニホンオオカミ含め、たくさんいるハイイロオオカミの亜種のうち数種類はすでに絶滅しています。
メキシコオオカミ以外にも現在絶滅危惧種のオオカミはいて、みんな似ている理由で絶滅した、あるいは絶滅の危機に陥っています。
環境破壊からくる人間との衝突
人間が生活範囲を広げることによって伐採が行われ、豊かだった自然環境には道路や建物などのインフラの建設が進み、行き場を失った野生動物はより住みやすい土地を求めるか、人間との衝突をリスクしてでも居続けます。
環境の変化により小動物たちが減り、餌を見つけるのが困難になったメキシコオオカミたちは牧場や民家から家畜動物やペットを襲う。
この為、1900年代初頭から政府機関がメキシコオオカミの駆除活動を推奨し、成獣から幼獣まで容赦なく、あらゆる方法で駆除されました。
1950年代からはメキシコでも政府主体の駆除活動が広まり、その約20年後にはほぼアメリカ・メキシコともに壊滅状態に…。
世界中の様々な言い伝え、おとぎ話、文学などで「悪者」として描かれるオオカミですが、実際は理由がない限り襲わないとても賢い動物です。「悪さ」を行う背景は人間が作り出している…と言っても過言ではないです。
メキシコオオカミを取り巻く問題
1)「悪者」としてのイメージ
法律で守られているからと言って、全人類が動物好きになった訳でもなく、平和な共存を求めている訳はありません。
未だに家畜を襲う事からメキシコオオカミを敵視する人は多いです。アメリカで狩りはスポーツとしても嗜まれており一般人の銃の所持も認められている為、尚のこと駆除や狩りの危険はメキシコオオカミを付き纏っています。
2)生息地の分断
現在は、以前繁栄していた頃とほぼ同じ地域にメキシコオオカミはリリースされていますが、以前とは違ってオオカミ達が安全に暮らせる自然環境の面積は少なくなっています。
その為、オオカミのコロニーはなかなか成長できない上に、棲息エリアが分断されているせいで野生での繁殖も進まず、思うように野生個体の数が増加しないのが保護団体の悩みの種です。
3)新たな害獣の登場
そしてこちらはどちらかというとアメリカ南西部の社会問題ですが、
メキシコオオカミが減少したことによって、鹿やハヴェリーナ(ペッカリーの一種、日本でいうと猪)の生息数が爆発的に増え、今度は家畜ではなく作物の被害が増加してしまいました。
生物多様性とは健康的な環境そのものであり、一部が欠けてしまうとバランスが崩れて様々な問題が発生します。絶滅危惧種のメキシコオオカミが完全復活する事によってまたバランスが取り戻される日を強く願います。
次回BLOG・・・
Southwest Wildlife Conservation Centre がメキシコオオカミのために行っている保護活動を詳しく紹介します!